数学 > 解析学 > 解析学基礎 > 解析学基礎/ラプラス変換
目次
ラプラス変換とは
ラプラス変換の定義
は
で
となる関数とする。
のフーリエ変換が存在しないときでも、
をある正の実数として
のフーリエ変換は定義できることがある。このとき、フーリエ変換は

となる。ここで、
として
=\int _{0}^{\infty }f(t)e^{-st}\ dt}](data:image/gif;base64,R0lGODlhAQABAAAAACH5BAEKAAEALAAAAAABAAEAAAICTAEAOw==)
をラプラス変換と定義する。
ラプラス変換は筆記体(カリグラフィー体)のLを用いた
という記号で表される事も多いが、変換元の関数を明示したい場合には
や
などという記号で表す場合もある。また、カリグラフィー体ではなくスクリプト体
を用いることもある。ラプラス変換ではtの関数を定積分するため、変換後の関数の変数はtではないことに注意。
ラプラス変換
に関して、変換前の関数
を表関数(原関数)、変換後の関数
を裏関数(像関数)という。また、表関数はラプラス変換の変換核ともいう。sは一般に複素数である。なお、変数名をとって表関数を「t領域の関数」、裏関数を「s領域の関数」ともいう。
指数α位の関数
ラプラス変換は無限区間の広義積分であるから、極限が収束するときにしか使うことができない。どのような関数に対して収束するのかという十分条件として、指数α位の関数という関数のクラスを定義する。
定義 関数
が不等式
(Mは正の定数)を満たすとき、
は指数α位であるという。
関数
が指数
位ならば、
が成り立つ。
を満たすsに対して優関数
の積分
は収束するので、解析学基礎/広義積分#優関数の原理により、ラプラス変換
も収束する。
またこの不等式から、
が指数
位で
ならば、はさみうちの原理より
であることもわかる。
ラプラス変換の公式
積分の線型性より
が成り立つ。
のとき、
のとき、
のとき、
同様に、
あるいは、部分積分によって
この第2項を更に部分積分して、
が得られる。これを
に関して解けば
が得られる。同様の計算を行う事により
も得られる。
双曲線正弦関数、双曲線余弦関数のラプラス変換も同様にして求まる。
={\frac {\omega }{s^{2}-\omega ^{2}}},\quad {\mathcal {L}}[\cosh \omega t](s)={\frac {s}{s^{2}-\omega ^{2}}}.}](data:image/gif;base64,R0lGODlhAQABAAAAACH5BAEKAAEALAAAAAABAAEAAAICTAEAOw==)
が成り立つ。これを上述の正弦と余弦のラプラス変換に用いれば、
のとき、
が成立する。
以下関数
が無限階微分可能(すなわち
級である)と仮定する。
部分積分の公式を使うことで、導関数のラプラス変換の公式は導出される。
関数
の微分のラプラス変換は
となる。
もちろん(これに限らず数学の学習全般に言えることだが)、公式を理解し使いこなすためには、このような一般的な証明をすることと、具体的な(2次関数や3次関数あるいは三角関数や指数関数などの)初等関数を例として実際にラプラス変換の計算をしてみることで実際に上記の公式
が成り立つことを確認することと、両方をやってみることが大切である。以降、この本ではわざわざこのような注意はしないが、言われなくても必ずこのような学習をしましょう。
高階導関数のラプラス変換も、この公式を繰り返し適用することで得られる。たとえば、
となる。以下同様の事を繰り返せばn階導関数のラプラス変換の公式
が導出される。(証明は数学的帰納法による。)
多項式関数
のラプラス変換を考える。ラプラス変換は線型性を持つため、
となる。 したがって、
に対して
が求まれば、
のラプラス変換も求まる。
を定義通りに計算するならば部分積分をm回繰り返すことになるが、次のように簡単に計算することもできる。
とすると、
が得られる。よって、
である。
ところで、上述の導関数のラプラス変換の公式を適用すると
となる。ゆえに
が成り立つ。
また、部分積分を一回計算してできる漸化式
と初期条件
からも同じ結果を得る。
あるいは、
と置換することで
を得る。
が自然数のときはガンマ関数と階乗の関係
から同じ結果を得る。
- 7. 独立変数
が掛かった関数のラプラス変換
ここでは関数
の裏関数
が複素変数
で微分可能であると仮定する。
の両辺を
で微分すると、解析学基礎/関数列の極限#微分と広義積分の順序交換の定理3.5より
が成り立つ。従って
より
が得られる。
- 8. 独立変数
の冪が掛かった関数のラプラス変換
上の7.で得られた公式を関数
に適用すると
が成り立つことがわかる。以下同様の議論を繰り返す事により
が導かれる。
可積分な関数
に関して、定積分
のラプラス変換は以下のように求まる。
(
フビニの定理)
あるいは、微分のラプラス変換を利用することで以下のように求めることもできる。
とすると微分積分学の基本定理より
なので、
ここで
より
原関数の微分は像関数にsを掛ける操作に対応するが、原関数の積分は像関数をsで割る操作に対応することがわかる。ここからも、微分と積分が逆演算の関係であることが読み取れる。
の畳み込みを

で定義する。畳み込みのラプラス変換は、
&=\int _{0}^{\infty }dte^{-st}\int _{0}^{t}duf(u)g(t-u)\\&=\int _{0}^{\infty }dt\int _{0}^{t}duf(u)e^{-su}g(t-u)e^{-s(t-u)}\\&=\int _{0}^{\infty }du\int _{u}^{\infty }dtf(u)e^{-su}g(t-u)e^{-s(t-u)}\\&=\int _{0}^{\infty }duf(u)e^{-su}\int _{u}^{\infty }dtg(t-u)e^{-s(t-u)}\\&=\int _{0}^{\infty }duf(u)e^{-su}\int _{0}^{\infty }dtg(t)e^{-st}\\&={\mathcal {L}}[f](s){\mathcal {L}}[g](s).\end{aligned}}}](data:image/gif;base64,R0lGODlhAQABAAAAACH5BAEKAAEALAAAAAABAAEAAAICTAEAOw==)
ここで、4行目の式変形は、積分範囲が
で与えられていることによる。
逆ラプラス変換
※複素解析学も参照
ラプラス変換は単射である。すなわち、異なる関数のラプラス変換が一致することはない。したがって、次を満たすような写像
が存在する。
この
を逆ラプラス変換と呼ぶ。
ラプラス変換は
のフーリエ変換であるから、フーリエ逆変換により
e^{i\omega t}d\omega }](data:image/gif;base64,R0lGODlhAQABAAAAACH5BAEKAAEALAAAAAABAAEAAAICTAEAOw==)
となる。従って
e^{(\sigma +i\omega )t}d\omega \\&={\frac {1}{2\pi i}}\int _{\sigma -i\infty }^{\sigma +i\infty }{\mathcal {L}}[f](s)e^{st}ds\end{aligned}}}](data:image/gif;base64,R0lGODlhAQABAAAAACH5BAEKAAEALAAAAAABAAEAAAICTAEAOw==)
となる。逆ラプラス変換は直線
に沿う線積分で表される。積分経路となるこの直線はブロムウィッチ積分路と呼ばれる。
積分区間に含まれる定数
は、
の収束半平面を収束の下限境界
を用いて
と書けるときに
を満たす任意の実数である。
,
とする。
のとき

であるから

となる。ここで
とした。

より、
ならば
のとき
となる。従って
のとき

となる。留数定理より

であるから

を得る。ただし、和はすべての
に含まれる特異点
について取る。ラプラス変換の定義よりある実数
が存在して、
でラプラス変換は収束するからこの領域に特異点は存在しない。従って、和はすべての特異点について取ると考えていい。
また、
のときも同様に考える。積分路を右半円で閉じる[2]と、この内部に特異点は存在しないから
となる。
ラプラス変換の応用
線型微分方程式への応用
ラプラス変換を用いて、微分方程式を解いてみよう。例として下の問題を考える。
例1
,
この微分方程式の左辺のラプラス変換は線型性により
なので、両辺にラプラス変換を施すと
より
が成り立つ。ここで右辺を部分分数分解すると、
となる。この両辺に逆ラプラス変換を施せば第2節で述べたラプラス変換の公式より
が得られる。(ここで逆ラプラス変換にも線型性が成り立つ事を用いた。)
あるいは留数を使って
と求めることもできる。
斯くして初期値問題の解
が導かれた事になる。
例2 
を解け。
両辺をラプラス変換すると

となる。
について解くと

ここで、
![{\displaystyle {\begin{aligned}{\mathcal {L}}^{-1}\left[{\frac {1}{(s-1)(s-2)^{3}}}\right]&=\operatorname {Res} _{s=1}{\frac {e^{st}}{(s-1)(s-2)^{3}}}+\operatorname {Res} _{s=2}{\frac {e^{st}}{(s-1)(s-2)^{3}}}\\&={\frac {e^{t}}{(-1)^{3}}}+{\frac {1}{2}}\lim _{s\to 2}{\frac {d^{2}}{ds^{2}}}{\frac {e^{st}}{s-1}}\\&=-e^{t}+{\frac {1}{2}}(t^{2}-2t+2)e^{2t}\end{aligned}}}](data:image/gif;base64,R0lGODlhAQABAAAAACH5BAEKAAEALAAAAAABAAEAAAICTAEAOw==)
また、
![{\displaystyle {\begin{aligned}{\mathcal {L}}^{-1}\left[{\frac {sy_{0}-3y_{0}+y'_{0}}{(s-1)(s-2)}}\right]&=\operatorname {Res} _{s=1}{\frac {sy_{0}-3y_{0}+y'_{0}}{(s-1)(s-2)}}+\operatorname {Res} _{s=2}{\frac {sy_{0}-3y_{0}+y'_{0}}{(s-1)(s-2)}}\\&=-(-2y_{0}+y'_{0})e^{t}+(-y_{0}+y_{0})e^{2t}\\\end{aligned}}}](data:image/gif;base64,R0lGODlhAQABAAAAACH5BAEKAAEALAAAAAABAAEAAAICTAEAOw==)
である。よって

を得る。斉次解が
に、特解が
に対応していることがわかる。特解を求めるだけならば、
と仮定して計算するほうが早い。
例3 
を解く[3]。この微分方程式は固有振動数
のバネと減衰率
の摩擦力に外力
が加わる場合や、RLC回路に対応する。また、
である。
ラプラス変換すると、

となる。
をとなる関数
を伝達関数という。
の逆ラプラス変換を
とすると、

となる。すなわち、
はグリーン関数である。今回の場合は、

であるから、逆ラプラス変換は
のとき 
のとき 
のとき 
のとき 
となる。例えば、
のときの解を具体的に書くと

となる。
ラプラス変換と周波数応答
適当な常微分方程式をラプラス変換して伝達関数が

と得られれたとする。入力として正弦波
を与えたときの出力
は

となる。したがって、出力は振幅が
倍され、
だけ位相がずれたものになる。
- ^ ラプラス変換は
で
となる関数に対して定義されているため、正確には関数
のラプラス変換である。以下も同様である。
- ^
となるためには、右半円
で閉じる必要がある。
- ^ つまり、特解を求めるということである。任意の初期値を満たす解が知りたい場合は斉次解を足すだけでいい。
コメント