高校化学 結晶

この単元では、結晶をはじめとする固体の構造について学ぶ。

目次

固体の構造

結晶

粒子が規則的に配列している固体を結晶という。結晶は主に金属結晶、イオン結晶、分子結晶、共有結合結晶の4種に分類される。

結晶中の規則正しい粒子配列を結晶格子という。また、結晶格子の繰り返し構造の最小単位を単位格子という。

結晶構造において、1個の原子にもっとも近い原子の数を配位数という。配位数は、結晶格子の種類によって決まる。配位数を計算する際には、単位格子内の原子だけでなく、隣接する格子の原子も考慮する必要がある。

結晶構造を持つ個体物質を結晶質という。

アモルファス

構成単位の配列に規則性を持たずに集合した個体物質を非晶質という。非晶質の構造には周期性がなく、このような状態をアモルファス無定形)という。

原子が不規則に配列した金属をアモルファス金属という。 アモルファス金属は高温で融解した金属を急速冷却することで得られる。アモルファス金属及びその合金は強靭性・対腐食性・強力な磁気性など、通常の金属にはない特徴を持っている。

珪素元素が不規則に配列されたアモルファスシリコンは通常の珪素結晶に比べて安価であり、薄膜に加工できることから太陽電池・液晶パネル等に用いられている。

二酸化珪素SiO2{\displaystyle {\mathrm {SiO} {\vphantom {A}}_{\smash[{t}]{2}}}}は通常は共有結合結晶として存在する(水晶・石英)が、水晶・珪砂を高温で融解して凝固させると、非晶質である石英硝子を得る。これは光ファイバーの原料として活用されている。

窓・コップなど一般的に用いられる硝子は曹達石灰硝子ソーダせっかいガラスといい、珪素原子・酸素原子からなる立体網目構造にナトリウムイオンやカルシウムイオンを入れ込んだ非晶質でできている。融点は不定であり、加熱によって変形する。

金属結晶

金属結合では、原子は規則的に配列をして結晶を作る。金属結晶では、単位格子は主に3種類ある。列記すると、

  • 面心立方格子 Al, Cu, Ag, Ni,Au, Pt など
  • 体心立方格子 Fe, W, Ba、およびアルカリ金属のLi, Na,K など
  • 六方最密構造 Zn, Mg, Co など

である。

  • 面心立方格子の模式図
  • 体心立方構造の模式図
  • 六方最密充填構造

単位格子中の原子の数

体心立方格子

体心立方格子構造

単位格子の中に1個の原子があり、単位格子の立方体の8頂点にあるそれぞれの原子は単位格子の中に18{\displaystyle {\frac {1}{8}}} 存在する。

したがって、単位格子中の原子の数は

188+1=2{\displaystyle {\frac {1}{8}}\cdot 8+1=2}面心立方格子

立法体の隅の原子は、格子に属する部分の大きさが球の18{\displaystyle {\frac {1}{8}}}である。これが8か所ある

面の中央の原子は、大きさが、球の 12{\displaystyle {\frac {1}{2}}} である。これが6か所ある。

したがって、単位格子中の原子の数は18×8+12×6=4

{\displaystyle {\frac {1}{8}}\times 8+{\frac {1}{2}}\times 6=4}

六方最密構造の原子数

六方最密構造の所属原子数は、図から分かるように、2個である。


面心立方格子の配位数

面心立方格子では、配位数は12である。単位格子の図を見ると、面心に位置する原子は8個の隣接原子と接触している。しかし、単位格子の図だけでは、隣接する格子にある原子も含めて考える必要がある。具体的には、単位格子を中心に4つの近接原子が省略されているため、面心立方格子の配位数は12である。

体心立方格子の配位数

体心立方格子の場合、単位格子の中心に位置する原子に注目する。体心立方格子の中央の原子は、周囲の8個の原子と接触している。したがって、体心立方格子の配位数は8である。

六方最密構造の配位数

六方最密構造では、単位格子内の中央の原子に注目すると、計算が簡単になる。単位格子内では、中央の原子は9個の隣接原子と接触している(6個の上面の原子と、下面の3個の原子)。そのため、配位数は12である。

原子半径

体心立方格子の原子半径の求め方

密度を求めるには、単位格子の1辺あたりの長さを知らなければならない。もし、原子半径 r と、単位格子の1辺あたりの長さ l には、図からわかるように、次の関係がある。

体心立方格子の場合、原子半径rと、単位格子の1辺あたりの長さ l との関係式は、図のように三平方の定理より、4r=3r

{\displaystyle 4r={\sqrt {3}}r}

よってr=34l

{\displaystyle r={\frac {\sqrt {3}}{4}}l}

である。

面心立方格子の原子半径の求め方

面心立方格子の、原子半径rと、単位格子の1辺あたりの長さ l との関係式は、三平方の定理より、r=24l

{\displaystyle r={\frac {\sqrt {2}}{4}}l}

である。

充填率

単位格子中に原子の占める体積の割合を充填率という。充填率を計算で求めるには、定義どおりに、単位格子中の体積を、単位格子の体積で割れば、求まる。

  • 体心立方格子の場合

まず、単位格子中の原子の体積は、以前の節で説明したように、原子2個分の体積である。

つまり体積は、2×43πr3

{\displaystyle 2\times {\frac {4}{3}}\pi r^{3}}

である。

そして、 体心立方格子の場合の原子半径rと、単位格子の1辺あたりの長さ l との関係式は、前の節で計算した通り、r=34l

{\displaystyle r={\frac {\sqrt {3}}{4}}l}

なので、これによって充填率が求まる。充填率 = 2×43πr3l3=2×43π×3364l3l3=38π0.68

{\displaystyle {\frac {2\times {\frac {4}{3}}\pi r^{3}}{l^{3}}}={\frac {2\times {\frac {4}{3}}\pi \times {\frac {3{\sqrt {3}}}{64}}l^{3}}{l^{3}}}={\frac {\sqrt {3}}{8}}\pi \approx 0.68}

よって体心立方格子の充填率は 68% である。

  • 面心立方格子の場合

充填率 = 4×43πr3l3=4×43π×2264l3l3=26π0.74

{\displaystyle {\frac {4\times {\frac {4}{3}}\pi r^{3}}{l^{3}}}={\frac {4\times {\frac {4}{3}}\pi \times {\frac {2{\sqrt {2}}}{64}}l^{3}}{l^{3}}}={\frac {\sqrt {2}}{6}}\pi \approx 0.74}

よって面心立方格子の充填率は 74% である。

イオン結晶

イオン結晶の仕組み

塩化ナトリウムNaClのイオン結晶の模式図

 個体のNaClは、同じ数のNa+とClが交互に並んだ結晶構造になっている(図を参照のこと。紫色の球はNa+を表し、緑色の球はClを表す。)。イオン結合による結晶をイオン結晶という。イオン結晶は、全体としては電気的に中性となる。イオン結晶を表すには組成式が用いられる。組成式は化学式の一種であり、同じく化学式の一種である分子式との違いは、物体がイオン結晶を取るか否かである。(つまり、H2Oは分子式であり、NaClは組成式である。)このような違いが存在するのは、分子には区切りがあるのに対し、イオン結晶には区切りがないためであり、イオン結晶を化学式で表すのに最小単位を取ろうとしたためである。粒子同士の結合のうち、イオン結合は強い結合であるため、イオン結晶は融点が高く、硬い。しかし、外部からの力には弱い。これは、外部からの力によって結晶がずれ、陽イオンや陰イオン同士が隣り合うことで反発するためである。また、結晶のままでは電気は導かないが、水溶液にしたり、融解させると電気を導くようになる。

イオン結晶の構造

塩化ナトリウムNaClの単位格子

右の図は、塩化ナトリウムNaClの単位格子を表している。NaClにおけるNa+とClの配位数は、ともに6である。  図より、塩化ナトリウムの単位格子に含まれるイオンの数は、点に18{\displaystyle {\frac {1}{8}}}個、辺に14{\displaystyle {\frac {1}{4}}}個、面に12{\displaystyle {\frac {1}{2}}}個含まれているため、次のようになる。
Na+:14×12+1×1=4{\displaystyle {\frac {1}{4}}\times 12+1\times 1=4}  Cl:18×8+12×6=4{\displaystyle {\frac {1}{8}}\times 8+{\frac {1}{2}}\times 6=4}
よって、それぞれ4つづつあるので、イオンの数の比は Na+:Cl=1:1 となり、組成式はNaClとなる。

イオン結晶が安定である条件

陽イオンと陰イオンの比が1:1となるイオン結晶の構造には、NaCl型CsCl型ZnS型などがある(それぞれの配位数は6、8、4)。イオン結晶がどの構造を取るかは、一般には陽イオンと陰イオンの半径比によって定まる。

それぞれのイオンは反対符号のイオンと接していて、その数が多いほど安定である。すなわち、配位数が大きい結晶ほど安定である。しかし、陰イオンと陽イオンの半径比が大きくなりすぎると陰イオン同士が接してしまうので不安定になる。


以下、単位格子の一辺の長さをa{\displaystyle a}、陽イオンの半径をr+{\displaystyle r^{+}}、陰イオンの半径をr{\displaystyle r^{-}}とする。NaCl型の場合

[NaCl型単位格子の平面図]

図よりa=2(r++r){\displaystyle a=2(r^{+}+r^{-})}・・・①

陽イオンを小さくしていくと陰イオン同士が接するようになり、このとき単位格子の対角線を考えると①から22(r++r)=4r{\displaystyle 2{\sqrt {2}}(r^{+}+r^{-})=4r^{-}}が成り立つ。

よってイオン半径比はr+r=210.414{\displaystyle {\frac {r^{+}}{r^{-}}}={\sqrt {2}}-1\fallingdotseq 0.414}である。

さらに陽イオンを小さくすると陽イオンと陰イオンが離れることで陰イオン同士の反発力により結晶が不安定となる。

したがって、r+r0.414{\displaystyle {\frac {r^{+}}{r^{-}}}\geqq 0.414}であれば配位数6のNaCl型構造をとることができる。実際のNaClのイオン半径比は0.116[nm]0.167[nm]0.695{\displaystyle {\frac {0.116[\mathrm {nm} ]}{0.167[\mathrm {nm} ]}}\fallingdotseq 0.695}である。CsCl型の場合

[CsCl型単位格子の平面図]

図より3a=2(r++r){\displaystyle {\sqrt {3}}a=2(r^{+}+r^{-})}・・・②

NaCl型と同様、陰イオンと陽イオン及び陰イオン同士が接する場合を考えると、②より23r=2(r++r){\displaystyle 2{\sqrt {3}}r^{-}=2(r^{+}+r^{-})}が成り立ち、イオン半径比はr+r=310.732{\displaystyle {\frac {r^{+}}{r^{-}}}={\sqrt {3}}-1\fallingdotseq 0.732}である。

NaCl型と同様、イオン半径比がこれより小さくなると不安定になるので、r+r0.732{\displaystyle {\frac {r^{+}}{r^{-}}}\geqq 0.732}であれば配位数8のCsCl型構造をとることができる。実際のCsClのイオン半径比は0.181[nm]0.167[nm]1.08{\displaystyle {\frac {0.181[\mathrm {nm} ]}{0.167[\mathrm {nm} ]}}\fallingdotseq 1.08}である。ZnS型の場合

[ZnS型単位格子の平面図]

図より32a=2(r++r){\displaystyle {\frac {\sqrt {3}}{2}}a=2(r^{+}+r^{-})}・・・③

NaCl型と同様、陰イオンと陽イオン及び陰イオン同士が接する場合を考えると、③より6r=2(r++r){\displaystyle {\sqrt {6}}r^{-}=2(r^{+}+r^{-})}が成り立ち、イオン半径比はr+r=6220.225{\displaystyle {\frac {r^{+}}{r^{-}}}={\frac {{\sqrt {6}}-2}{2}}\fallingdotseq 0.225}である。

NaCl型と同様、イオン半径比がこれより小さくなると不安定になるので、r+r0.225{\displaystyle {\frac {r^{+}}{r^{-}}}\geqq 0.225}であれば配位数3のZnS型構造をとることができる。


これらを綜合して、イオン数比が1:1であるイオン結晶について、r+r0.732{\displaystyle {\frac {r^{+}}{r^{-}}}\geqq 0.732}のときCsCl型、0.732>r+r0.414{\displaystyle 0.732>{\frac {r^{+}}{r^{-}}}\geqq 0.414}のときNaCl型、0.414>r+r0.225{\displaystyle 0.414>{\frac {r^{+}}{r^{-}}}\geqq 0.225}のときZnS型の構造をとることが推測される。

なお、実際にはこれらから推測される構造と異なる構造をとる物質も存在する。

また、イオン数比が1:1でない場合、CaF2ReO3など、単位格子の種類が爆増する。

分子結晶

分子結晶の性質

分子間力によって形成される結晶を分子結晶という。水、二酸化炭素、沃素、ナフタレン、蔗糖などの結晶は分子結晶である。

分子間力は比較的弱い力なので、分子結晶は軟らかい。また、沸点・融点が低く常温で液体・気体であるものが多い。無極性分子からなる二酸化炭素・沃素・ナフタレンなどは分子間力が非常に弱いので昇華・凝華する。

分子からなる純物質は通電しない。しかし、塩化水素・酢酸など溶媒に溶けると電離して通電可能になるような物質も存在する。


氷の結晶中では水分子が水素結合で互いに結びついているが、正四面体型の立体構造をとるので隙間が多くなっている。そのため、氷が融解して水になると一部の水素結合が切断され、水分子の一部が隙間に入り込む。このため、氷の密度は液体の水より小さく、氷は水に浮く。

他の殆どの物質では、固体は液体に沈む。

なお、水が最大密度を取るのは4℃である。このため、全球凍結下であっても海底付近の水温は4℃に保たれ、生命が生き永らえたたとされる。

双極子モーメント

分子や原子間の結合の極性の大きさを示す尺度として、以下のような量が定義されている。

双極子モーメント

正電荷 +q [C]と負電荷 -q [C]がr [m]だけ離れているとき、μ = qr [C・m]を双極子モーメントという。
物質μ /10-30 (C・m)
HF6.09
HCl3.70
HBr2.80
HI1.50

双極子モーメントが大きいほど、その分子・原子の極性が大きい。

また、双極子モーメントを測定することによって、共有結合にイオン結合性がどれほど混ざっているかを調べることができる

HClの双極子モーメント・結合距離それぞれの測定値はμ=3.70×1030Cm,r=1.27×1010m{\displaystyle \mu =3.70\times 10^{-30}\,\mathrm {C\cdot m} ,r=1.27\times 10^{-10}\,\mathrm {m} }である。仮にH-Clが純粋なイオン結合で結びついていたとして双極子モーメントを求めると、H+,Cl{\displaystyle {\mathrm {H} {\vphantom {A}}^{+}{,}{\mkern {6mu}}\mathrm {Cl} {\vphantom {A}}^{-}}}それぞれが持つ電荷は電気素量|e|=1.60×1019C{\displaystyle |e|=1.60\times 10^{-19}\,\mathrm {C} }に等しいので、結合距離の測定値からμ0=1.60×1019C×1.27×1010m2.03×1029Cm{\displaystyle \mu _{0}=1.60\times 10^{-19}\,\mathrm {C} \times 1.27\times 10^{-10}\,\mathrm {m} \fallingdotseq 2.03\times 10^{-29}\,\mathrm {C\cdot m} }である。

これらの比をとると、μμ0=3.70×1030Cm2.03×1029Cm0.18{\displaystyle {\frac {\mu }{\mu _{0}}}={\frac {3.70\times 10^{-30}\,\mathrm {C\cdot m} }{2.03\times 10^{-29}\,\mathrm {C\cdot m} }}\fallingdotseq 0.18}なので、HClの結合には約18%のイオン結合性があるとわかる。

共有結合結晶

非金属元素の原子が次々に共有結合した構造からなる結晶を共有結合結晶という。共有結合結晶は結晶全体が共有結合によって強固に結びついているので、一般的に融点が非常に高く、極めて硬い。水に難溶且つ通電しないものが多い。

ダイヤモンド(金剛石こんごうせきは炭素原子が4つの価電子を全て使って次々に共有結合で繫ってできた共有結合結晶である。正四面体型の炭素結晶が三次元的に繰り返される結晶構造をとる。無色透明でw:モース硬度は最高ランクの10と非常に硬い。但し、w:靱性は低いのでハンマーで叩くと容易に割れる。融点が高く、通電しない。

[ダイヤモンドの単位格子の図]

ダイヤモンドの配位数は4で、その単位格子には8つの炭素原子が含まれている。この単位格子中の原子配列は、単位格子の頂点とそれぞれの面の中に原子が並び、その立方体を8等分した小立方体の一つおきの中心に原子が加わった配列となっている。


黒鉛(グラファイト)の結晶も共有結合結晶であり、4つの価電子のうち3つを使い次々に共有結合で繫ってできた共有結合結晶である。正六角形の網目状の平面構造が弱い分子間力で層状に折り重なって結晶をなしている。そのため、黒鉛は薄くて剥がれやすい。共有結合を形成するときに一つ余った価電子は自由電子として平面構造の中を動けるので、黒鉛は通電する。


珪素結晶はダイヤモンドと同じ構造であるが、電気伝導性が導体と絶縁体の中間なので半導体と呼ばれる。詳しくはこちらを参照。

二酸化珪素の結晶も共有結合結晶であり、珪素原子と酸素原子の共有結合Si-Oが三次元的に繰り返されてできる。二酸化珪素の構造は温度によって異なる。

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